『ル・ジタン』①~犯罪者たちの叫び~

 ジプシー民族は西暦1000年頃、インドの北西部から北部アフリカやヨーロッパへ移動してきた少数民族で、ヨーロッパでは、ユダヤ人と同様に歴史的に差別の対象となってきた民族だそうです。

 彼らにはものを所有するという考え方が無く、全ては共通の財産であると考えており、そのため、平気で人のものを持っていくそうです。実生活でも博打やこそ泥のようなことをして生活している者も多いらしく、ヨーロッパ人にとっては、ジプシーは泥棒と同じであるといっても言い過ぎではないといいます。
 彼らの呼称は、英語ではジプシー、フランス語ではジタン、ボヘミアン、ドイツではチゴイネル、スペイン語ではジターノと呼ばれているそうです。日本ではジプシー、ボヘミアンなどが有名な呼称でしょうか。
 日本でも彼らの文化の多くは、既に紹介されており、誰でも知っているものも多くあります。スペインでの旅芸人のフラメンコ、サラサーテのバイオリン協奏曲「チゴイネルワイゼン」、プロスペル・メリメ作・ビゼー作曲の歌劇「カルメン」、ブラームスの「ハンガリー舞曲」、ヴィクトル・ユーゴー原作の「ノートルダム・ド・パリ」の主人公エスメラルダもジプシーの女性であるし、タロットカード占いもジプシーの文化です。

チゴイネルワイゼン

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 これらは、野性的でロマンチック、そして、漂っている妖しささえ個性的で魅力的なものと感じてしまいます。同じような被差別民族であるアメリカ黒人たちのジャズやブルースと同様に、ジプシー民族特有の文化を素晴らしいと感じるのはわたしだけではないでしょう。


『ジョゼ・ジョバンニという作家に、日本の作家には見られない冒険者の肖像を見て、それが、興味があるのである。
(中略)
私が敢えて「ル・ジタン」を、翻訳(というよりも、自己流に意訳)する気になったのは、ここには、犯罪者のかわいた生態と行動が描かれてあり、作家自身の過去の「冒険のにおい」がただようているからであった。』

「ル・ジタン~犯罪者たち~」の後記「暗黒街の作家について」柴田錬三郎
(ジョゼ・ジョバンニ作、柴田錬三郎訳 昭和51年 勁文社刊より)


 映画『ル・ジタン』は、このような背景を持つジプシー出身の犯罪者をジョゼ・ジョバンニの原作、監督、脚本によりアラン・ドロンが好演しています。
 彼らが単に犯罪映画を作品とするだけに止まらず、少数民族の苦悩をテーマにまで掘り下げたこの作品は、犯罪者たちの苦悩、そして冒険心に共感したジョゼ・ジョバンニとアラン・ドロンの人生における心の叫び、そして彼らの生きるための闘いをうまく反映させることができていたように感じます。
 そして、観るものにとっても少数民族ジプシーの美しく悲しい運命のようなものを感じ取ることができ、心が傷ついてしまうのです。
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by Tom5k | 2005-05-07 23:11 | ル・ジタン(3)