人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画作品から喚起されたこと そして 想い起こされること

by Tom5k

『アラン・ドロンについて』⑤~伝統的キャラクター・アクター、二重自我の魅力 オカピーさんとの対話~

映画の良心というキャッチ・フレーズがピタリとはまる、わたしのブロ友のプロフェッサー・オカピーさんをお招きして?アラン・ドロンの本質的な魅力をさぐってみました。

実は、過去に何度もわたしの話題にお付き合いしていただいたこと、これが何とも有意義なコメント集になっていましたので、オカピーさんのご了承も得られ今回の更新記事としました。


2005年12月29日
オカピーさん
ルネ・クレマンは素晴らしいですね。基本的にタイトな作風で無駄がない。それは初期のドキュメンタリー・タッチの作風が晩年まで続いたということなのでしょう。彼のベスト5は、「太陽がいっぱい」「禁じられた遊び」「居酒屋」「海の牙」「しのび逢い」辺りと思います。
 アラン・ドロンもお好きなようですね。実は私も大好きで、演技者としてもっと評価されるべきと思っています。かつてアルセーヌ・ルパンに夢中になった私としては若い頃「黒いチューリップ」で颯爽としたところを披露した彼にルパンを演じてもらいたかったところです。「太陽がいっぱい」「冒険者たち」「若者のすべて」「サムライ」「山猫」あたりが贔屓作品です。


トム(Tom5k)
オカピーさんの嗜好は、クレマンにしても、ドロンにしても王道ですね。
アラン・ドロンは『世にも怪奇な物語』のウィリアム・ウィルソン、勧善懲悪の『怪傑ゾロ』、『黒いチューリップ』、多くの「フィルム・ノワール」作品のギャングや殺し屋などの伝統的なキャラクターがよく似合います。
戦前のクラッシック映画を70年代に復活させた俳優なのではないでしょうか?

2006年4月2~4日
>『山猫』のドロンこそ私のアルセーヌ・ルパンのイメージ
とのこと。
わたくしも以前から、ドロンがアルセーヌ・ルパンを演じたらピッタリだと以前から思っていました。
彼はクラシック、つまり古典がよく似合う俳優だと思いますので、『ルパン』以外にも『ドラキュラ』や『ジキルとハイド』などの古典の名作に、もっと出演して欲しかったと思っています。
最も演じて欲しかったのは『吸血鬼ドラキュラ』です。

ところで、最近、色々なブログでオカピーさんのコメントに出会います。わたくしの映画の嗜好と似ているのでしょうか?
非常に愉快です。
魔人ドラキュラ (ベスト・ヒット・コレクション 第9弾) 【初回生産限定】
ベラ・ルゴシ / / ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン





ジキル博士とハイド氏 コレクターズ・エディション
フレデリック・マーチ / / ワーナー・ホーム・ビデオ





奇傑ゾロ
ダグラス・フェアバンクス / / アイ・ヴィー・シー






オカピーさん
トムさん、こんにちは。
用心棒さんジューベさんのところでお会いしましたね。基本的に古い映画をとても大切にしている方たちばかり。映画に対する愛情と探究心が深く、文章も大変うまい。おかげで自分が<井の中の蛙>であったことを思い知らされました。

ルパンを演ずるにはやや陰もある貴族の末裔的な雰囲気が重要だと思うのですが、ロマン・デュリス(先般の「ルパン」でのルパン役)では散文的でお話になりません。尤も未見ですけど。
『ゾロ』は展開は荒かったですが、ドロンは良かったなあ。『黒いチューリップ』は最近観ていませんが、結構好きですね。
ルパン
ロマン・デュリス / / 角川エンタテインメント







トム(Tom5k)
>オカピーさん、夜中に失礼します。
うかつだったのですが、ジャック・ベッケル監督の『怪盗ルパン(LES AVENTURES D'ARSENE LUPIN)』があったのを忘れておりました。未見ですが、いつか観たいと思っております。残念ながらDVDもビデオも販売されていないようです。
しかし、かのベッケル監督ですから、期待できそうな気がしており、DVD化を強く期待しています。
Les Aventures D Arsene Lupin
Maurice Leblanc / / Hachette





かつて『ベルモンドの怪盗二十面相』というルパンのパロディ作品が公開されたときのことを思い出しました。わたしは、オカピーさんと同様にドロンにルパンを演じて欲しかったので、ライバルのベルモンドに先をこされたような気がして(作品は、本来のルパンのイメージとは全く異なるドジな泥棒のコメディでしたけれど)、くやしい気持ちになっていたことを思い出します。
オカピーさんはドロンのルパンが実現していたら、監督は誰が理想ですか?
わたしは、なんと言ってもジュリアン・デュヴィヴィエ監督に演出して欲しかったです。


オカピーさん
トムさん、こんばんは。
ベッケルの『怪盗ルパン』は私も観ていません。ベッケルはタッチの良い監督ですので、確かに期待できますね。ルパンはイメージが出来ているので、怖い感じもしますが。
『ベルモンドの怪盗二十面相』・・・そんな映画もありましたね。ベルモンドとは古い付き合いのフィリップ・ド・ブロカが監督でしたが、全く記憶に残っていないところを見ると、大したことはなかったのでしょうか。

古典的なムードを出せ、洒落っ気があり、流れるような文体を誇るデュヴィヴィエで文句なし。スリラーにも実績がありますし。


2006年5月31日~6月2日
トム(Tom5k)
オカピーさん、TB・コメントどうもでした。
(『仁義』について)キャスティングが豪華すぎて、焦点がぼやけたのかもしれませんね。わたしはブールヴィルの警視を単純に主役にすべきだったのかなとも思っています。まあ、それはメルヴィル監督も気がついていて、次作『リスボン特急』での刑事の孤独にテーマを絞った理由なのだろうと感じています。
それから、『仁義』の後、メルヴィル監督はドロンでルパンを撮る企画を立てていたそうです。実現していれば、独特のルパンものになったでしょうね。


オカピーさん
トムさん、こちらこそコメント有難うございました。
なるほど、ブールヴィルを主人公に据えてもっと短くすれば、純文学的な方向で上手く作れたかもしれませんね。トムさんのご意見を借りれば、性善説・性悪説の対比が主題として。
そうですか。ドロンのルパンは夢ですから実現して欲しかったなあ。でも、演出がメルヴィルでは相当重くなったでしょうね。あれから考えましたが、演出者として、『黒いチューリップ』を撮ったクリスチャン=ジャック辺りでも上手く作れたかもしれませんね。


トム(Tom5k)
オカピーさん、あんまり、うれしいことを言ってくれるので、連続の書き込みをしてしまいます。
もうまさにクリスチャン・ジャック監督のドロンのルパン、今すぐに見たくなってしまいましたよ。実現したら最高でしたでしょうね。
日仏合作『黄金仮面(明智小五郎VSルパン)』で三船の明智と再共演や、英(もしくは米)仏合作『ルパンVSホームズ』でテレンス・ヤング監督のブロンソンのホームズとの一騎打ちとかなんていうのも面白いかもしれませんね。
ブロンソンは『雨の訪問者』の印象で、ホームズが浮かびました。
考えただけでワクワクしてきますよ。
では、また。
雨の訪問者(字幕スーパー)
チャールズ・ブロンソン / / コロムビアミュージックエンタテインメント







オカピーさん
トムさん、返事が送れてすみません。
三船の明智は良さそうですね。多分天地茂より良い(笑)。
ブロンソンはちょっと英国臭がないかなあ(※注)、という印象です。テレンス・ヤングは良いかもですね。
今となっては全てが夢の夢。
「雨の訪問者」ですか。懐かしいですね。当時絶好調だったフランシス・レイの音楽が耳にこびりついていますよ。「パリのめぐり逢い」「個人教授」「ある愛の詩」・・・良い仕事をしました。レイのサントラ主題曲集なんてないかしら。
フランシス・レイ作品集
オムニバス / / ビクターエンタテインメント
※ オカピーさん、ここにありましたよ。でも、これサントラかな?トム(Tom5k)



※注
その後、ブロンソンのホームズ役を何人かの友人に話してみましたが、揃ってホームズ役は合わないとのブーイング意見でした(笑)。トム(Tom5k)



2007年4月21~27日
トム(Tom5k)
(『復讐のビッグガン』について)こっこれは、珍しい作品を取り上げましたね。
わたしとしても、ほとんど無関心な作品だったんですが・・・。
17・8年前に一度観たきりです。ファンとして失格ですけど、ただ注視すべきは、おっしゃるとおり
>ピエロ姿のドロン
このシークエンスには、確かに感じるものがありますよ。いずれ整理して記事にはしたいと思っています。やっぱオカピーさん、鋭いですなあ。
最近、何十回目でしょうか、豆酢さんも好きなロージー監督の『パリの灯は遠く』を観ました。何十回観ても素晴らしいものは素晴らしいです。
ではでは。


オカピーさん
トムさん
>ピエロ姿のドロン
深く検討すれば、『黒いチューリップ』とは同じであり逆でもある、人間の仮面性といったところに行き着くところではありますよね。
『パリの灯は遠く』は不条理な悲劇でしたね。色々複雑な思いを抱いた作品ですが、実は30年前に一度しか観ていないです。すみません。


トム(Tom5k)
(『黒いチューリップ』について)待ってました、オカピーさん!(笑)
二重人格や一人二役はアラン・ドロンの右に出る者はいないとまで思っていますよ。恐らくですが、ドロン自身もそういった役柄にかなりの陶酔感を持っていたのではないかな?
>冒険ものの三大設定
やっぱり、クリスチャン・ジャック監督なんかは、フランス映画の最後のクラシック作品の作り手だけあって、セオリー・基本が見事ですよね。
「ヌーヴェル・ヴァーグ」作品も好きですけど(本当に大好きです)、戦前から戦後60年代始めくらいまでのフランス映画は最高です。
吉永小百合さんもリアル・タイムで見ていたらしく、絶賛されていた記憶があります。アニエス・ヴァルダ監督も『百一夜』で強調していたように思いますし、女性ファンが多い作品だと思います。
こころの日記 (1969年)
吉永 小百合 / / 講談社





>彼のアルセーヌ・ルパン
最近、ジョニー・トー監督のノワール作品にドロンが出演するらしいとの情報がありますが、老ルパンの役なら、まだ期待できるかも。わたしとしては、ルコントかベッソンあたりで制作してほしいですね。
ああ、またなんかカルネやクレール、デュヴィヴィエ、フェデールなんか見たくなってきちゃった。


オカピーさん
トムさん、こんばんは。
本当にドロンの二役には痺れますよねえ。
また大物はこういう役を一度はやりたがりますね、プロデューサーや監督に求められるまでもなく。

ヌーヴェルヴァーグ以降の作家が小手先というわけではないですが、それ以前の作家は、フランスに限らず、小手先ではなく本当に基本を大事に作っていますね。

>老ルパン
そう言えば『ハーフ・ア・チャンス』では、初老の怪盗紳士役を楽しそうにやっていました。
ベッソンは劇画的になりすぎる傾向があるので、私は文芸色のあるルコントで観たいです(笑)。


最近なかなかお邪魔できずにすみません。
今ピークで、へーへー言っております。

私の読書の幅も益々広がって文学では物足りず、思想・哲学も守備範囲にしようかと思っております。「社会契約論」も読んでみたいですねえ。昔の記憶を辿ると、「民約論」とも言いましたね。ルソーは興味深い著書が多いですよね。「エミール」「告白録」「新エロイーズ」など。
人間不平等起原論 社会契約論
ルソー 小林 善彦 井上 幸治 / 中央公論新社






エミール
ルソー / / 岩波書店





それはさておき、(『黒いチューリップ』について)ドロンの二役が最高でした。結局はドロンのために作られた作品ということに尽きますよね。
この時代の彼で、ルパン・シリーズの傑作「カリオストロ伯爵夫人」をクリスチャン・ジャックで作ったら永久保存版になっただろうなあ。さあ伯爵夫人は誰にさせましょうか?稀代の悪女です。同時代の女優なら、ジャンヌ・モロー? 80年代に入って貫禄の出てきたカトリーヌ・ドヌーヴでも良いかなあ。
済みません。妄想の世界に入ってしまいました。


トム(Tom5k)
>オカピーさん
おおっ!ジャン・ジャック・ルソーを、ですかっ!日本人は、民主国家になった段階でここが不足しているがために、本来の意味での近代国家に成りきれていないのだと思いますよ。多くの人が、江戸末期から明治初期にかけてルソーを読むべきだったはずです。わたしは今からでも遅くないと思いますよ。本当に素晴らしいですね。
『エミール』は、この八方ふさがりの時代に益々の必読書とも思います。日本の教育が、今行き詰まっているのも『エミール』を読まないからだっ!

すみません、取り乱してしまいました。
さて、
>ドロンの二役・・・
ふ~む。いやまったく、絶品ですよ。彼の分裂人間はっ!
むしろ、分裂してないドロンなんて、クリープを入れないコーヒーのようなもんです(例えが少し古かったでしょうか?)。

クリスチャン・ジャックのドロン=ルパンは、以前、オカピーさんの企画で最も優れたルパン企画であると興奮させていただいた記憶がありますが、カリオストロ伯爵夫人ですか?
こっこれは、また興奮しそうだ!
>ジャンヌ・モロー、カトリーヌ・ドヌーヴ
おおっ魅惑のジョセフィーヌ!
素晴らしいっ!
しかし、わたしからすると新しすぎます。あえて「ヌーヴェル・ヴァーグ」の女優は無視しましょう。
クラシックの正統で考えればジーナ・ロロブリジダ、もしくはフランソワーズ・アルヌール、世代を考えなければ、マルチーヌ・キャロル、ヴィヴィアンヌ・ロマンスあたりかなあ。マリー・ベルでも素敵な伯爵夫人になりそうっ!
やばっ、美輪明宏が浮かんできちゃった。

ガニマール警部は難しいですよ。トランティニャンやギャバンだとルパンを撃ち殺してしまいそうだ(笑)。
では、また。


オカピーさん
おおっ、お付き合い戴き有難うございます。

>カリオストロ伯爵夫人
マルチーヌ・キャロルは私も考えましたが、やや色気過多? フランソワーズ・アルヌールは全盛期では若すぎる?
ロロブリジダは大変イメージに近いですが、惜しむらくはイタリア人。まあこの際譲っちまいますか(笑)。

美輪明宏・・・却下(当たり前)。「黒とかげ」ではないんですから(爆)。

>ガニマール警部
イメージとは違いますが、ドロンと縁のあるリノ・ヴァンチュラ。この人を考えたら他の人が全く思い浮かばなくなってしまった(笑)。ルイ・ジューヴェも刑事役の実績ありますが、老けすぎ?

幻想映画館・・・楽しいですね。クラリスや乳母も考えないと(笑)。


トム(Tom5k)
オカピーさん、ようやく仕事も一段落と思いきや、今までの数倍の量の業務に襲いかかられましたよ。愚痴ですが参りましたよ。
さて、幻想映画館ですが、考えて観ることが出来ないというのが、残念ですが、いろんな企画を立てられそうですね。考えついた監督や俳優の違った個性にも気付かされます。
用心棒さんが、G×G対決のシナリオを記事にしていましたが、あれも面白かったです。
こういう企画も、たまにはいいかもしれません。
ではでは



いつも、アラン・ドロンが伝統的な俳優、そしてスターであること、彼の二面性が魅力的であることなどを基本に楽しくお話しさせていただいています。
オカピーさん、いつもドロン談義にお付き合いいただき、ありがとう。
トム(Tom5k)
by Tom5k | 2007-07-14 18:28 | アラン・ドロンについて(12) | Trackback(2) | Comments(2)
Tracked from 良い映画を褒める会。 at 2007-07-26 17:01
タイトル : 『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922) これが全ての吸血鬼..
 F.W.ムルナウ監督の1922年の作品。いわゆる吸血鬼が出てくる映画の元祖であり、以降のドラキュラ映画の原点となる作品です。ほとんどの構図とストーリー展開はここから一歩も出ていない。影響力という点では、ジェームズ・ホエール監督の傑作『フランケンシュタイン』(1931)にも劣りません。では『魔人ドラキュラ』(1931)ほど人気が無いのは何故か。... more
Tracked from 良い映画を褒める会。 at 2007-07-28 01:28
タイトル : 『吸血鬼』(1932)映画の本質と光と影の使い方を熟知し..
 いまでは知る人も少なくなってしまっているのは残念ではありますが、デンマーク出身の名匠、カール・ドライアー監督の1932年の作品で、クロース・アップの多用で有名な『裁かるゝジャンヌ』と並ぶ彼の代表作品のひとつがこの『吸血鬼(ヴァンパイア)』である。... more
Commented by オカピー at 2007-07-15 03:17 x
平日はお仕事でご多忙なようですが、このように編集して戴き有難うございました。

思った以上に、きちんと対談していました。こういうことがあるかもしれませんので、今後も手は抜けませんね(爆)。

>幻想映画館
カリオストロ伯爵夫人役ですが、やはりジャンヌ・モローにしましょうよ。彼女はジャック・ベッケルの「現金に手を出すな」の脇役で注目されたヌーヴェルヴァーグ以前の女優でもあるので(笑)。

ルソーはまだですが、アリストテレスの「詩学」を読んでみました。事実上の演劇論ですが、これがなかなか面白くて、私の考える映画論に通じるところもあるんです。
Commented by Tom5k at 2007-07-15 15:24
>オカピーさん、いらっしゃい。
いやもう、週休の日に休めるようになったのも最近ですよ(泣)。

やはり、お話ししたことをこう整理してみると新しい発見が多くあります。また再整理して体系化していきたいと思っています。
>幻想映画館
いや確かにジャンヌ・モロー、おっしゃるとおりですな。ヌーヴェル・ヴァーグへの逆差別は冷静ではありません(笑)。あとで思ったんですが、後年のロミー・シュナイダーも悪くありませんよね。

>アリストテレスの「詩学」
おお、こういう古典に基本のエッセンスが詰まってるんですよね。是非ともオカピー映画論に活かして、多くの映画ファンに還元してください。
では、また。
名前
URL
削除用パスワード